1992 年 31 巻 6 号 p. 1075-1078
本症例は20歳, 女性で斜台に発生した脊索腫である. 手術時の圧挫細胞診で, 背景は粘液様物質にとみ, 腫瘍細胞は担空胞細胞 (physaliphorous cells) と空胞を有しない上皮性細胞を認め, 一部でlacuna内に存在する核を認め, 軟骨様脊索腫と診断した. ホルマリン固定ヘマトキシリンエオジン標本ではalcian blueに濃染する軟骨様基質を背景に, 脊索腫に特有なphysaliphorous cellsを認め, 明らかなlacunaをもつ軟骨へ分化したものを認めた. 腫瘍細胞は免疫染色法で, NSE, S-100, Keratin, EMA, Vimentinに陽性を示した. 脊索腫は細胞診診断上, 臨床像, 部位, 肉眼所見から困難ではないが, 予後を知るうえで脊索腫を軟骨様, 非軟骨様の2型に分けることは重要である. 本症例では手術時圧挫細胞診がその鑑別に有効であった.