日本臨床細胞学会雑誌
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喀痰中に混入した口腔内粘膜尋常性天疱瘡の細胞像
螢光抗体直接法の試み
川西 康夫稲富 五十雄西谷 定一森川 淑子古谷 悦子山田 建男田中 哲郎石原 八重岩井 裕子三宅 清雄
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1985 年 24 巻 1 号 p. 57-64

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抄録

胸部X線写真に腫瘍陰影を認め, 剖検で胸腺腫と診断された69歳女性の尋常性天疱瘡を検索中に, 喀痰塗抹標本に悪性腫瘍細胞に酷似した口腔粘膜由来のTzanck cellの混入を認めたので, Papanicolaou染色法で細胞所見を検討する一方, 螢光抗体直接法によって肺腺癌細胞を対照とした比較検討を行った.
Papanicolaou染色標本ではTzanck cellは散在性あるいは集合重積し胞体に空胞をもつ細胞集団として出現した.核は類円形で肥大しN/C比増大, 核縁は肥厚, 核小体肥大が顕著であった.胞体には核周囲明庭や層状構造が認められた.また多核巨細胞も認められた.水疱床からの擦過塗抹標本にみられるTzanck cellとは出現形態が異なり, 標本観察上これらTzanck cellの細胞所見は十分留意されねばならない.
螢光抗体直接法に対してTzanck cellはその胞体にびまん性の強い螢光の染着性を示したが, 対照とした肺腺癌細胞は細胞膜と核小体に染着性を示した.したがって螢光の染着部位の差異から両者の鑑別は可能である.
本例は稀有な症例であったが, 最終的な診断が螢光抗体直接法によって得られたことを強調したい.

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