運動後は睡眠が改善すると考えられ,入眠潜時短縮や徐波睡眠を増加が見られる.しかし,運動が睡眠構築に良い影響を与えるという見解に反する報告もある.このように運動が睡眠構築に与える影響の不一致はまだ解明されていない.運動が睡眠に及ぼす影響について,9名の健康な若い男性 (平均±SEM:23.8±2.1歳) で就寝6時間前からトレッドミルを使用した60分間の運動 (V・O2maxの60%) と座位安静を行う試行のクロスオーバー試験を行った.睡眠は睡眠ポリグラフ検査によって評価し,併せて深部体温と間接熱量測定を行った.運動後の睡眠時エネルギー消費量は増加した.運動により深睡眠時間とレム睡眠潜時 (約28分) が短縮され,睡眠前半30分のδパワーは,運動試行がコントロール試行と比べて高い値を示した.さらに,envelope 分析により,睡眠前半において深睡眠の安定性が高くなることが示唆された.各睡眠ステージの時間を計測する従来からの睡眠構築についての解析方法からは運動が睡眠に好影響を及ぼす効果は検出できなかったが,δ波のenvelope 分析では,SWSのデルタ (0.5-4 Hz) パワーの大幅な増加とSWSの安定性の増加が示された.