2012 年 43 巻 p. 175-180
TEY法およびTFY法を用いて測定したN-K吸収スペクトルの分析深さを調べるために,Si3N4試料にCrを1~100 nmの厚さで堆積させてN-K吸収スペクトルを測定した.TEY法ではSi3N4のN-K吸収のピークが,膜厚2 nmまでははっきりと見られたが,3 nmではわずかに見えるだけとなり,4 nmでは見えなくなった.TFY法では膜厚100 nmでも,Si3N4のN-K吸収のピークがはっきりと見られた.ピーク強度の減少は,Cr膜の透過率の膜厚依存性としてほぼ説明できた.また,Arプラズマでエッチングしたことで表面の構造が変化したGaN結晶のN-K吸収スペクトルを測定した.TEY法で得たスペクトルでは,ピーク形状が平滑化しており結晶構造の乱れが確認できた.TFY法で得たスペクトルではピークの形状に変化はなかった.これにより,表面と内部で構造の異なる試料の評価に,TEY法とTFY法を併用することの有効性が確認できた.