マグネトロンスパッタ法で作製した窒化ホウ素(BN)薄膜の結晶構造を調べるため,B-KおよびN-K吸収端近傍微細構造(NEXAFS)を計測した.その結果,基板温度を600℃程度に上げて,かつ負のバイアス電圧を80 V以上印加した場合のみ,立方晶窒化ホウ素(c-BN)が安定して形成できることが分かった.また,表面敏感な全電子収量(TEY)法とバルク敏感な全蛍光収量(TFY)法のデータを比較することにより,表面にc-BN相の膜が形成される場合にも,内部ではh-BN相の割合が比較的高いことが分かった.これまで報告されたBN薄膜のNEXAFSデータの多くは,h-BN相ベースの薄膜のものであった.今回報告するBN薄膜では,c-BN粉末の標準試料に近いスペクトルが得られており,c-BN相薄膜を形成するためのデータベースとして有効に活用できるものと考える.