2023 年 43 巻 4 号 p. 177-182
背景:リストカット瘢痕に悩む患者は非常に多く,近年,リストカット瘢痕に対する戻し植皮術の治療報告が散見される。われわれは多数のリストカット瘢痕患者に対し回転戻し植皮術を行った。
方法:リストカット瘢痕に対し,低濃度大量浸潤麻酔として局所麻酔を行い,電動デルマトームを用いて8/1,000 inchの厚さで採皮を行ったのち,植皮片を90°回転させ同部位に戻し植皮を行った。術後瘢痕と術前の悩み(他人の目が気になる,半袖が着られない,など)の改善度について,それぞれ患者本人によるpatient and observer scar assessment scale(POSAS)およびアンケートで評価を行った。
結果:80名の患者に手術を施行した。術後瘢痕について,POSASの総合評価で平均2.7点(1点が満足,10点が不満)であり,満足という結果であった。また,術前の悩みの改善度については平均3.5点であり,悩みの改善も得られた。
結論:リストカット瘢痕に対する回転戻し植皮術は局所麻酔下に日帰りでの手術が可能であり,合併症が少なく,良好な整容性と悩みの改善が得られる有用性の高い手術であると考える。