2017 年 3 巻 1 号 p. 79-84
症例は69歳,女性。胸腔鏡併用左肺上葉切除術+リンパ節郭清+左椎体(Th3–5)外側~左半椎弓切除術を受けた。術後創部頑痛のためオキシコンチン15 mg/日を服用するもすっきりせず,術後30ヵ月後当科初診。① 牛車腎気丸(TJ-107)7.5 g+ブシ末(調剤用)「ツムラ」(TJ-3023)2 g,② 加味帰脾湯(TJ-137)7.5 g,③ 通導散(TJ-105)5.0 gを処方したところ,オキシコンチンの効果が改善した。その後,地黄による胃腸障害のため牛車腎気丸を中止し,① ブシ末調剤用「ツムラ」(TJ-3023)1 g,② 加味帰脾湯(TJ-137)5.0 g,③ 通導散(TJ-105)5.0 gで維持し,創痛は初診後約2ヵ月で軽快した。7ヵ月後,傍脊柱部の創痛が再燃。方剤の増量は希望されなかったため,鍼治療を併用したところ,十分な除痛が可能となった。
本症例は漢方治療が奏功したものの,牛車腎気丸の服用が困難となり,疼痛コントロールが低下したものである。傍脊柱部の創は足太陽膀胱経に沿うため,下肢での同経絡から取穴するとともに,三陰交を利用して裏寒症の改善をはかり鎮痛に寄与できた。この取穴・刺鍼手技は簡便で,脊椎外科術後の疼痛管理にも貢献しうるものと考える。