日本国際看護学会誌
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ポルトガル語版危険回避教育ツールをブラジル人入院児とその親に用いた看護師の語りによる事故防止対策の評価
柴 邦代 植木 美貴子汲田 明美服部 淳子岡崎 章
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2021 年 4 巻 2 号 p. 47-57

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抄録

目的:ポルトガル語版危険回避教育ツールを用いて、入院中の在留ブラジル人患児とその親に事故防止対策を行った看護師の語りから、ポルトガル語版「危険回避教育ツール」(以下、翻訳版)を用いた事故防止対策を評価するとともに、ツールの改良点を検討することを目的とした。
方法:質的記述的方法で、入院中のブラジル人の親子に翻訳版を使用して事故防止対策を行った5人の看護師への半構造化インタビューを実施した。危険回避教育ツールには転倒・転落・点滴の3種類がある。
結果:インタビューの結果、翻訳版を配布した6人のブラジル人入院児(6ヶ月〜9才)とその親に関する看護師の語りから抽出された56コードは、ツールへの親子の反応2カテゴリー、ブラジル人親の事故防止行動3カテゴリー、看護師によるツール配布の評価3カテゴリーに集約された。ブラジル人親からは、翻訳版に対する肯定的な反応が確認され、ツール内容に沿った事故防止行動も確認された。一方で、子どもの反応で、ツールへの関心・理解・事故防止行動の変化は確認できなかった。ブラジル人親の事故防止行動からは、転倒と点滴抜去についてはツールを使用したことの効果と思われる結果が示された。一方で、転落については【子どもの側にいる時にはベッド柵全面降下】が認められ、ツールの効果がみられなかった。
考察:ブラジル人親については、翻訳版に対する肯定的な反応やツール内容に沿った事故防止行動が確認されたことから、事故防止対策に翻訳版を利用することの有意性が示唆された。一方で、子どもについては、ツールへの関心・理解・事故防止行動の変化などは確認できておらず、ツールの有効性を確認することはできなかった。子どもがツールに対して関心をもってくれる工夫をした上で、改めて子どもに関する評価を行う必要がある。また、ブラジル人親の事故防止行動では、転倒と点滴抜去についてはツールを使用したことの効果と思われる結果が示された。転落については【子どもの側にいる時にはベッド柵全面降下】があり、ツールの使用が親の行動変容につながらなかったことから「ベッド柵をあげる」部分を強調し、印象づける改良の必要性がある。本研究の限界は、対象者である看護師が5名と少なく、特定の施設におけるデータである為、施設や観察対象となった親子の特性が結果に影響している可能性がある。今後、対象者を拡大して調査を継続する必要性がある。

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