日本国際看護学会誌
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病棟看護師の外国人入院患者に対するコミユニケーションと看護の質の現状に関する研究 ―医療通訳者の有無、家族・友人通訳者の有無での比較を通して―
泉 恵里奈
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2020 年 3 巻 1 号 p. 43-52

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抄録

目的:病棟看護師と外国人入院患者とのコミュニケーションと看護の質の現状を通訳者の使用の有無を介して比較し、実態・課題を明らかにする。
方法:本調査は2018年10月にA病院に所属する病棟看護師224名を対象として、アンケート調査(無記名自記式質間用紙)を実施しその結果を単純・クロス集計し内容を分析した。
結果:質間紙の回収率は70.1%であった. A 病院において過去3 年間に医療通訳者を介して外国人患者の対応経験がある看護師は全体の73.3%、家族や友人を通訳として対応を行った看護師は68.2%、通訳者を介さずに対応を行った看護師は63.7%であった。「患者に、日本人患者に対応する時と同じように必要な説明や患者からの質間に対して答えることができたか」の間いに対して、医療通訳者を使用した場合と家族・友人通訳を使用した場合、「そう思う」と回答した病棟看護師の割合が看護師自身で対応した場合よりも多かった(p<0.001) 「日本人患者と同等のケアを提供することが出来たか」という問いに対しては、「そう思う」と回答した者が、家族・友人通訳を介して対応した場合、医療通訳者を使用した場合、看護師自身で対応した場合の順に多かった(p<0.001)。「日本人患者と比べてケアを提供するのに時間がかかったか」という間いに対しては、全ての場合で「そう思う」と回答した割合が最も多く有意差はなかった(p=0.099)。 また、「対応を通して戸惑ったことや苦労したことがあるか」という間いに対しても、全ての場合で「時々ある」と回答した割合が最も多く有意差はなかった(p=0.711)。「対応時に、うまく対応できるか不安を感じたことがあるか」の問いに対しては、「不安をあまり感じない」と回答した者の割合は、医療通訳者を使用した場合や看護師自身で対応した場合よりも、家族・友人通訳を使用した場合の方が多かった(p=0.003)。「対応する際、正直面倒であると思ってしまうことがあるか」という質間に対しては、「あまりそう思わない」と回答した者が全ての場合において最も多かった印=0.217)。
考察:病棟看護師が外国人入院患者を対応時、家族・友人通訳を含む通訳者を使用した方が通訳者を使用しないで対応した時よりも、患者に必要な説明や質問に対する対応や日本人患者と同等のケアができたと感じていることから、通訳を介すことでより十分な説明や質の良いケアの提供に繋がるといえる。一方、いずれの対応方法でも時間的・心理的負担があると回答した者が多く、外国人入院患者の対応は、通訳者の有無に関わらず病棟看護師にとって負担が大きいのだと判明した。このことから、医療機関において日中や平日など限られた時間の中で医療通訳者を使用するのではなく、医療通訳者が24 時間迅速に対応できるような、そして使用する医療スタッフへの周知徹底ができるような体制づくりが必要であることがわかった。

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