日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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サルコペニア予防
同種造血幹細胞移植を2度行った患者で、2回目の移植時にサルコペニアに至らなかった一症例
中西 景子大林 梨花塚田 信弘
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p. 47

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抄録

【はじめに、目的】

同種造血幹細胞移植(以下、同種移植)では、移植前の前処置療法や移植後の移植片対宿主病(以下、GVHD)により身体活動が著しく制限されるため廃用症候群を生じやすいと報告されている。今回再発により初回移植から9か月後に2回目の同種移植を行った患者に対し、移植前よりリハビリテーションを行い、2回目の移植時にサルコペニアに至らなかった一症例について報告する。

【方法】

症例紹介:半年前に急性リンパ性白血病と診断され、同年に2回同種移植が施行された50歳の男性。1回目の移植日をDay0①としてDay-14①に入院。Day-6①より前処置療法開始。Day0①臍帯血移植(血液型不一致)を施行。Day+14①生着。Day+57①で自宅退院となった。Day+110①で再発。2回目の移植日をDay0②としてDay-14②に入院。Day-8②より前処置療法開始。Day0②骨髄移植(血液型不一致)を施行。Day+15②生着。Day+46②で自宅退院となった。合併症として、1回目の移植・2回目の移植とも皮膚急性GVHDを発症した。リハビリテーションは入院日より開始し、土日祝日を除く週5日の実施を基本とした。リハビリテーションの実施率は、1回目が86.9%、2回目が97.1%だった。

評価方法:入院時、生着後(クリーンルーム退出時)、退院前にアジアサルコペニアワーキンググループ(以下、AWGS2019)を用いて評価を行った。

【結果】

1回目の入院時のサルコペニア評価では、入院時サルコペニアなし(BIA法:8.28Kg/m2,握力:27.6Kg,歩行速度:1.43m/秒)、生着後サルコペニアあり(BIA法:6.37Kg/m2,握力:27.0Kg,歩行速度:1.58m/秒)、退院時サルコペニアなし(BIA法:6.3Kg/m2,握力:29.2Kg,歩行速度:1.3m/秒)だった。2回目の入院時のサルコペニア評価では、入院時サルコペニアなし(BIA法:6.53Kg/m2,握力:31.6Kg,歩行速度:1.77m/秒)、生着後サルコペニアなし(BIA法:6.27Kg/m2,握力:31.3Kg,歩行速度:1.68m/秒)、退院時サルコペニアなし(BIA法:6.81Kg/m2,握力:31.0Kg,歩行速度:2.04m/秒)だった。

【結論】

本症例は、1回目・2回目とも皮膚急性GVHDを発症した。1回目の移植後は発熱でリハビリを休まれる日もあり、活動性の低下から生着後の評価で低筋力を呈したと考えられる。しかし移植経験もあり、再入院前より自宅でも積極的に運動されていた。2回目の移植後クリーンルーム内でも積極的に運動されており、リハビリテーションの実施率も上がったことから、サルコペニアに至らなかったと考える。造血幹細胞移植において先行研究では、移植前の運動療法は筋力及び心肺機能が維持されることにより移植後のADL維持に有効であるとしている。よって移植前よりリハビリテーションを介入することで二次性サルコペニアの予防に効果があると考える。

【倫理的配慮,説明と同意】

本発表は、患者に同意を得ており、個人情報が特定できないように十分に配慮した。

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