日本予防理学療法学会 学術大会プログラム・抄録集
Online ISSN : 2758-7983
第9回 日本予防理学療法学会学術大会
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予防一般口述4
新しいサルコペニアスクリーニングツールの開発~予備的検討~
解良 武士大須賀 洋祐河合 恒伊藤 久美子平野 浩彦藤原 佳典井原 一成大渕 修一
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キーワード: サルコペニア, 質問紙, 開発
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p. 36

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抄録

【はじめに】

2018年に改訂されたヨーロッパサルコペニアワーキンググループのサルコペニアの発見、診断、重症度分類のアルゴリズムズでは、サルコペニアスクリーニングツールであるSARC-Fを用いることが推奨されている。しかしSARC-Fは低い感度が問題である。本研究は、SARC-Fに代わる高い感度を持つ質問紙を開発することを目的とした。

【方法】

東京都健康長寿医療センター研究所で実施しているコホート研究「お達者健診2011」の2019年の参加者のうち、欠損値のない675名を対象とした。握力、5m通常歩行速度およびBIAによる骨格筋量の測定を行い、アジアの基準に基づきサルコペニアを判定した。サルコペニアに関する質問として、SARC-Fに加えて「新しい質問紙」の項目の候補として8つの質問を作成し、それぞれ対象者から聴取した。2名の研究者が議論を行い、筋肉量減少/筋力の低下/身体機能を表現する8項目(①ペットボトルの挙上、②タオル絞り、③米袋の挙上、④階段昇降、⑤筋肉のつき具合、⑥歩く能力、⑦歩行速度、⑧歩行補助具)を選び、それぞれ困難な順に1~5点(1:できない~5:できる)に配点した。

データセットを男女比、サルコペニア有病率、年齢分布が等しくなるように、開発用データセット(n=338)と評価用データセット(n=337)に分けた。まず開発用データセットを用い、サルコペニア有無を従属変数としたときのロジスティクス回帰分析から、年齢(5歳刻み)を加えた8つの質問からサルコペニアと関連が強い項目を抽出し、その合計点を用いてサルコペニア有無に対するROC(Receiver Operating Characteristic curve)分析を行い、C統計量と感度・特異度分析を行った。作成した質問紙の内的一貫性の評価には、Cronbachのαを用いた。さらに交差妥当性を確認するために、評価用データセットにて同様の解析を行った。

本研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の倫理審査を経て実施され、参加者からは書面による同意を得た。

【結果】

サルコペニアは675名中41名であった(有病率9.5%)。ロジスティクス回帰分析の結果、②タオル絞り、⑤筋肉のつき具合、⑦歩行速度に加えて年齢(5歳刻み)が抽出された(P<0.001~0.003)。ROC 分析の結果、AUC(area under the curve)は0.81(95%CI; 0.73-0.88)であり、SARC-F(0.65(95%CI; 0.54-0.75)に比べて高値であった。カットオフ値を<=14に設定したときの感度は81.3%、特異度は63.6%と、SARC-Fに比べて高い感度・低い特異度であった。評価用データセットでも概ね同様であった。ただしCronbach のαは0.346と、内的一貫性は低かった。

【結論】

我々が検討している質問紙は、SARC-Fと同様の質問紙であり、Ishiiscreening toolのような身体計測が不要である点に優位性がある。SARC-Fに比べて高い感度を有しているため、新しい質問紙をスクリーニングとして用い、さらにSARC-Fを確定診断として用いることも可能である。このことから本研究の新しい質問紙は地域保健活動や地域医療で有益に活用できる可能性がある。しかしながら低い内的一貫性、サルコペニアの有病率が低い、再現性が検討できない、サンプル数が限られるなどの問題があるため、さらに検討が必要である。

【倫理的配慮,説明と同意】

本研究は、東京都健康長寿医療センター研究所の倫理審査を経て実施され、参加者からは書面による同意を得た。

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