2017 年 57 巻 6 号 p. 293-297
症例は右利きの57歳男性である.軽度の右顔面麻痺と非流暢性失語で発症し,失語が改善してきた第5病日から,foreign accent syndrome(FAS)を呈し,約2ヶ月間継続した.MRIで左中心前回の頭頂部から前頭頭頂弁蓋にかけて浮腫を伴った梗塞巣を認め,1年後は左中心前回,中前頭回,中心後回に陳旧性の小梗塞巣を認めた.元来の几帳面な性格を基盤に失語症の回復過程で発語ネットワークのプロソディー機能の異常が出現しFASが発症したことが想定された.責任病巣は慢性期に確認された小梗塞巣というより,急性期に浮腫が波及した左中心前回の頭頂から弁蓋部の可逆性部位が関与した可能性が推測された.