オレオサイエンス
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総合論文
双頭型ペプチド脂質の自己集合による一次元非共有結合性高分子の構築
小木曽 真樹
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2005 年 5 巻 6 号 p. 273-279

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抄録

ナノテクノロジーにおいて, ナノデバイスを構築する上で一次元ナノ構造体は重要なターゲットの一つである。生物は, 水素結合, 疎水性相互作用, 静電相互作用などの非共有結合を用いてペプチド, 糖, 核酸塩基, 脂質などの生体物質を組み上げて, 特にメゾスケールの大きさからなる生体組織を構築している。ペプチドはα-ヘリックスやβ-シートに代表される二次構造をアミド基問の水素結合ネットワークにより形成できる。ペプチドを脂質分子に導入したペプチド脂質の中にはペプチド間の水素結合ネットワークにより一次元ナノ構造体を形成するものも知られている。我々はこのレビューにおいて, 特に双頭型ペプチド脂質による一次元非共有結合性高分子の合成について報告する。双頭型脂質は通常の脂質に比べて膜融合などを起こしにくいことから, 高い安定性が期待される。オリゴグリシン双頭型脂質は水中でポリグリシンll型の二次元水素結合ネットワークを形成することで脂質マイクロチューブやナノチューブを与えた。それに対して, バリルバリン双頭型脂質はβ-シート的な一次元水素結合ネットワークを形成することでナノファイバーを与えた。ナノファイバーの表面にはカルボン酸が存在するため, 遷移金属イオンを一次元的に組織化する足場となる。この金属イオンを還元することで銅ナノ微粒子を一次元的に組織化した研究例も示す。

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© 2005 公益社団法人 日本油化学会
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