2024 年 24 巻 5 号 p. 197-203
バイオマス由来の軽量かつ非常に強い素材であるセルロースナノファイバー(CNF)は,石油由来の素材に代わる可能性を秘めた素材として,さまざまな産業分野で期待が寄せられている。一方,CNFの普及が進むにつれて,その超微細な繊維状の形状などの物理化学的特性から,有害性について懸念が生じるようになった。特に製造段階において,作業員の吸入暴露管理を実施していくことは重要である。しかしながら,CNF吸入毒性についての試験報告は乏しく,その実態についてはこれまで不明な点も多く,また試験方法にも課題がいくつか残されている。本稿は,CNF製品開発の一助として,これまで実施したCNFの吸入毒性試験の結果を中心に,CNF暴露の潜在的影響についての知見をまとめたものである。