耳鼻咽喉科臨床
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めまい疾患とモデル実験
脳循環障害によるめまい
松永 喬
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1985 年 78 巻 1 号 p. 1-20

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抄録

脳循環障害によるめまいの病態究明のため循環動態の実験的研究として血行力学的な simulation model と神経耳科学的な animal model を含む3種のモデル実験を行った.
1. 椎骨脳底動脈系のガラスモデル実験
並列流体管では細管側の流速は直列流体管とは逆に太管側より遅くなる. またこの細管側の流速は循環回路内の流体の粘稠度の高いほど, 搏動数の少ないほど太管側より遅くなる. しかしこの並列流体管に側枝管をつけると太管・細管間の流速差は小さくなる.
2. 1側椎骨動脈結紮または狭窄家兎の平衡機能検査
1側椎骨動脈結紮群に比べ1側椎骨動脈狭窄群の方に頭位眼振, 頭振後眼振の出現率が高く, 振子様回転検査の末梢迷路障害型がはるかに多かった.
3. 急性および慢性高血圧動物の平衡機能検査と光顕的内耳組織学的所見
薬物による急性高血圧モルモットでは平衡機能検査はほとんど異常を認めず, 内耳組織もほとんど正常であった. また1側腎動脈狭窄術と両側調圧神経切除術による慢性高血圧家兎の平衡機能検査では頭位眼振は認められたが, その他の平衡機能検査ではほとんど末梢迷路障害を示さず, 内耳も組織学的にほとんど正常であった.
4. 以上のことから並列流体管である椎骨脳底動脈系では左右いずれかの椎骨動脈およびAICA, PICAの側枝の循環障害がその循環動態に大きく影響することが充分考えられる. そして椎骨動脈の狭窄のような循環障害が並列流体管である椎骨動脈系の動的な左右差を生じ, 左右前庭系の血流のアンバランスを生じ, めまいを生じるのであろうと考える. また高血圧だけでは非可逆的な末梢迷路障害は少なく高血圧とめまいのモデル実験には他の要因の相加実験が必要と感じた.

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