耳鼻咽喉科臨床
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Neuronography による末梢性顔面神経麻痺の経過と予後
大内 利昭神崎 仁
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1978 年 71 巻 2 号 p. 153-161

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抄録

1) 末梢性顔面神経麻痺60例 (Bell 麻痺42例, Hunt 症候群15例, 外傷性顔面神経麻痺3例) にNGを施行した結果を報告した.
2) 麻痺発症後4週以内にNG%が19%以下に悪化した症例は Bell 麻痺の19.4%, Hunt 症候群の44.5%にみられた.
3) 麻痺回復過程のNG%の推移をみると, Bell 麻痺では発症早期にNG%の低い症例では, 臨床的に麻痺が改善してもNG%は長期間改善を示さず, これらの症例ではNGは麻痺回復過程の指標にはなりにくいと思われた. 一方, Hunt 症候群では発症早期にNG%の低い症例でも麻痺の臨床的改善とともに, NG%も改善する症例があり, これらの症例ではNGを麻痺回復過程の指標として利用し得る可能性があると思われた.
4) 顔面神経管開放術を施行した2例の Hunt 症候群では手術後5~6ヶ月でNG%の改善がみられた.
5) 発症早期にNGとNETの両者の成績が良い症例 (A群) では Bell 麻痺でも Hunt 症候群も全例予後良好であることを再確認した.
6) 発症早期にNGとNETの成績が相違する症例 (C群およびD群) の予後はNETよりもNGの示す予後に近かった.
7) NGはNETよりも早期予後診断法としてすぐれているが, NG単独, あるいはNET単独によるよりも, NGとNETの併用が, 早期予後診断法として, より確実な方法と考えられた.
8) 治癒の遷延した症例について, 症状が固定したと思われる時期に, 各種電気反応と麻痺の臨床的改善度との関係をみると, NETの成績が臨床的改善度に比較的一致しており, NG, EMG, evoked EMGの成績は一致していなかった.
9) NGは発症早期に, 治癒までの期間を判定するのには有用であるが, 発症早期の顔面神経管開放術の適応を決めることにはあまり役立たないと思われた.

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