2023 年 43 巻 p. 520-528
目的:統合失調症者は,他者の言動の意図の理解に困難を示すことがあり,対人交流上の問題を引き起こす可能性がある.本研究では,他者の意図の推論機能と精神症状との関連を明らかにすることを目的とした.
方法:入院中の統合失調症者45名を対象として構造的面接調査を行った.他者の意図の推論はヒント課題,精神症状はPANSSにて評価した.
結果:ヒント課題の「願望」の課題の得点が1.67~1.80であり,「怒り」「皮肉」の課題の得点は0.73~1.60であった.ヒント課題合計点とPANSSの「概念の統合障害」(r = –.58),「常同的思考」(r = –.53)において関連が認められた.
結論:統合失調症者は,怒りや皮肉のような二次感情を理解することが難しく,思路障害や内的な体験による思考が強い場合に他者の意図の推論が困難になる傾向があると考えられた.