地質学雑誌
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論説
北アルプス,仁科山地における白亜紀後期の高温で水に乏しい珪長質火成活動
植木 忠正原山 智
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2012 年 118 巻 4 号 p. 207-219

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抄録

白亜紀~古第三紀の火成活動で形成された多斑晶質の流紋岩,およびそれと関連した花崗岩は西南日本内帯に広く分布する.本研究ではこれらの多斑晶質の特徴に着目し,その活動地域の一つである北アルプス北東部・仁科山地に分布する白亜紀後期の多斑晶質流紋岩・木崎流紋岩と,関連した花崗岩である花崗斑岩~斑状花崗岩の青木花崗岩を対象に,マグマの性質(温度, 生成初期の含水量)の検討を行った.マグマの情報を残存する急冷周縁相の花崗斑岩を用い,地質温度計とMELTS プログラムによる解析を行った結果,一般的な珪長質マグマよりも高温で水に乏しい(850~900 ℃, H2O = 0.4~1.0 wt.%)というマグマの性質が明らかになった.この結果は,西南日本内帯に広く分布する同様の特徴をもつ多斑晶質の流紋岩も同様のマグマから生成され,白亜紀後期のユーラシア大陸縁辺では高温で水に乏しい火成活動が活発に起こっていた可能性を示唆している.

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© 2012 日本地質学会
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