2004 年 110 巻 6 号 p. 348-362
黒又川周辺地域に分布する足尾帯ジュラ紀付加コンプレックスは, 下位の黒又川コンプレックスと上位の大白川コンプレックスに区分される. 黒又川コンプレックスは, 主に緑色岩・チャートの中~大規模岩体と砂岩頁岩互層からなる. 大白川コンプレックスは, 混在岩を主体とし, 緑色岩・石灰岩・チャート・砂岩の小規模岩体を伴う. 頁岩から産する放散虫化石によると, 黒又川コンプレックスは中期~後期ジュラ紀 (late Bathonian - Oxfordian) に, 大白川コンプレックスは前期ジュラ紀 (late Sinemurian - early Pliensbachian) に形成されたと考えられる. 岩相の特徴と形成年代に基づくと, 黒又川・大白川コンプレックスは, 西南日本内帯の丹波-美濃帯ジュラ紀付加コンプレックスへの対比が可能である. 前期ジュラ紀に形成された大白川コンプレックスは, 丹波-美濃-足尾帯の中で, 形成年代が古く, かつ構造的最上位に位置するコンプレックスの一つである.