2014 年 4 巻 2 号 p. 160-166
酵素的グリコシル化反応は構造明確な糖鎖を得る有力な手法であり,近年の発展は目覚ましい。例えば,グルカンホスホリラーゼはα-D-グルコース1-リン酸 (Glc-1-P) を糖供与体,マルトオリゴ糖を糖受容体とするグルコシル化反応を触媒し,選択的にα-(1→4)-グルコシド結合が形成される。この酵素がある程度の基質認識の緩さを有していることを利用して,Glc-1-Pのアナログ基質を糖供与体に用いる酵素的グリコシル化反応が開拓されてきた。馬鈴薯グルカンホスホリラーゼがα-D-マンノース,2-デオキシ-α-D-グルコース,α-D-キシロースおよび(N-ホルミル-)α-D-グルコサミン1-リン酸を糖供与体として認識することで,それぞれ対応するグリコシル化反応が進行することが報告された。また,耐熱性グルカンホスホリラーゼが他のアナログ基質を認識することも見出され,例えばα-D-グルクロン酸1-リン酸を用いたグルクロニル化反応が起こることも報告された。さらに,耐熱性グルカンホスホリラーゼの糖受容体に対する認識性の緩さにより,α-D-マンノース1-リン酸を用いた連続的なマンノシル化反応が進行することも見出された。