ヒト声帯粘膜の前後端に存在する声帯黄斑は,幹細胞ニッチであり,黄斑に分布する細胞は組織幹細胞である可能性を我々は報告してきた.in vitroでは,黄斑内の細胞を培養すると異種性と多分化能を持った細胞が増殖してくる.本研究では,in vivoでヒト声帯黄斑内の細胞に異種性と階層性があるのかを検討した.
病変がない成人の声帯4例である.方法としてヒト声帯黄斑部の細胞を電子顕微鏡下に,あるいは免疫組織化学を用いて光学顕微鏡下に観察した.
in vivoにおいても光顕下・電顕下に敷石様の多角形細胞,細胞質に脂肪を保持した星細胞様の細胞,線維芽細胞様の紡錘形細胞が黄斑内に混在しており,生体内の黄斑内の細胞に異種性を認めた.
ヒト胚性幹細胞のマーカーであるSSEA-3は,敷石様の多角形細胞に強く発現しており,幹細胞性,異種性を持った黄斑内の細胞の中で,敷石様の多角形細胞は最も分化が低い細胞,すなわち階層性の頂点にある幹細胞である可能性が示唆された.
in vivoにおいても,ヒト声帯粘膜の黄斑内には異種性を持った幹細胞が混在しており,階層性を持っていることが示唆された.