2018 年 80 巻 2 号 p. 115-129
降雪現象の高精度予測のためには,降雪雲の物理特性の実態解明が必要不可欠である.本研究では,関東甲信地方で降雪時に市民から雪結晶画像を募集する「#関東雪結晶プロジェクト」を実施し,2016〜2017年冬季観測結果により,シチズンサイエンスによる雪結晶観測の有効性を確かめ,降雪特性の実態把握を試みた. 雪結晶の撮影にはスマートフォンのカメラを採用し,ソーシャル・ネットワーキング・サービスを用いた画像収集を行った.これにより,ごく簡易な雪結晶観測手法を確立し,シチズンサイエンスとして効率的な観測データ収集を実現した.この結果,ひと冬を通して1万枚以上の雪結晶画像が集まり,そのうち解析可能なものは73%だった.この取り組みによって首都圏での時空間的に超高密度な雪結晶観測が実現できた.観測結果は,現象の実態解明だけでなく,数値予報モデルの検証・改良などにも応用可能である.一方,シチズンサイエンスデータの特性として,人口の多い都心部での現象では観測数が増えるものの,内陸部のみでの降雪の場合は観測数が少ない傾向が見られた.今後,シチズンサイエンスによる雪結晶観測のネットワークを拡充するために,自治体や教育機関との連携,効果的な広報・普及活動が必要である.