75歳女性の肛囲Paget病の1例を報告した。下床に癌が存在し, その組織像は乳頭管状腺癌と多数の印環細胞を含む粘液細胞癌の2種類の癌組織が混在していた。また, 癌の周囲の間質の膠原線維に沿って, 主に印環細胞より成る癌細胞の多数の索状の浸潤を認めた。Paget細胞は基底層直上に散在する小型の印環細胞様細胞と, 一部に腺様構造を有する胞巣を形成する細胞とが見られ, 下床の癌の2種類の組織像を反映していた。電顕像でも明調細胞と暗調細胞の2種の細胞が観察され, これらの細胞は肛門粘膜上皮の杯細胞と円柱上皮に類似することから, 肛門粘膜由来の腺癌がPaget現象を示したものと考える。