2020 年 35 巻 3 号 p. 105-111
Humoral hypercalcemia of malignancy(HHM)を生じた皮膚有棘細胞癌の1例を経験したため報告する。症例は50歳,男性。右大転子部褥瘡を発生母地とした有棘細胞癌。化学放射線治療を行うも腫瘍の増大・骨破壊は進行し,経過中に意識障害を生じた。意識障害の原因となる器質的疾患は認められず,補正Ca値19.8 mg/dLと高値であったことから腫瘍随伴性高Ca血症(malignancy associated hypercalcemia:MAH)による意識障害と診断。高Ca血症の原因として腫瘍浸潤・骨破壊に伴うlocal osteolytic hypercalcemia(LOH),腫瘍細胞より産生される液性因子によるHHMを鑑別とし,副甲状腺ホルモン関連蛋白(parathyloid hormone related protein:PTHrP)10.1 pmol/Lと高値であったことからHHMと診断した。進行期悪性腫瘍患者が意識障害を来した場合,LOHやHHMによる高Ca血症の関与を考える必要がある。