季刊地理学
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観光鍾乳洞における気候特性
福島県あぶくま洞を例として
漆原 和子加藤 美雄上原 浩吉野 徳康
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1999 年 51 巻 3 号 p. 188-200

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抄録

福島県滝根町の結晶質石灰岩 (大理石) 地域に形成されたあぶくま洞において, 観光鍾乳洞の気候特性を明らかにするため小気候観測を実施した。観測は1996年夏季と1997年冬季の2回実施し, 気温・風向風速・CO2濃度の測定を移動観測と定点観測によって行った。
その結果, 閉鎖的な構造の上部洞では, 夏季, 冬季ともにほぼ無風状態であった。夏季に下部洞と中部洞では, 洞窟入口と洞窟出口を通じて洞窟内大気の流出がみられた。冬季には下部洞の入口から外気の強い流入があり, その風の一部は中部洞の出口から流出した。その影響で下部洞と中部洞は低温となり, 夏季より乾燥した。
洞窟内では, 気温とCO2濃度に対する入洞者の影響が年間を通じてみられた。入洞者のいる開洞時間帯には, 上部洞で高温域とCO2の高濃度域を形成した。夏季の洞窟内の気温変化は, 日入洞者数に応じた日変化があった。日入洞者数が最大となる8月中旬には, 日最低気温と日最高気温が夏季のピークに達した。冬季の気温変化は, 上部洞のみ日入洞者数に応じた日変化があった。

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