耳下腺癌はまれな疾患であるが,組織型が多彩であり,悪性度も様々で,診断や治療に苦慮することがある。今回は当科で一次治療として手術を行った耳下腺癌症例41例を対象として検討を行った。5年粗生存率は90.2%,5年無再発生存率は84.6%であり,多変量解析で有意差を認めた予後因子は頸部リンパ節転移の有無であった。予防的頸部郭清術を行った9症例中5例に頸部リンパ節転移を認めていたことから,局所進行癌や高悪性度癌が疑われる症例では予防的頸部郭清術を考慮することが必要と考えられた。肺転移再発をきたした症例にトラスツズマブ療法が著効した例があり,手術不能例や遠隔転移例に対する化学療法の知見の蓄積も期待される。