2017 年 27 巻 2 号 p. 211-215
頸部神経鞘腫の摘出では,術後の神経脱落症状を回避するために様々な工夫が行われている。われわれは橋本の推奨した被膜間摘出術を積極的に施行し,腫瘍の摘出では由来神経とその走行の確認,腫瘍被膜の確認が重要であることを報告してきた。多くの症例を経験すると腕神経叢,副神経,迷走神経,顔面神経由来の腫瘍では神経刺激器を用いることで細かな神経の走行が確認できるが,由来神経が交感神経などの腫瘍では,神経刺激器を用いても神経上膜で神経の走行確認が困難な場合も経験する。今回われわれは,Narrow Band Imaging(以下NBI)を応用することで腫瘍上での神経の走行,神経上膜の切開部位の決定,腫瘍被膜の確認に有効かどうかを検討したので報告する。
結果として,NBIは線維組織が明瞭に描出され神経上膜上の切開部位の決定,腫瘍被膜の同定に有効であった。神経刺激器が無効な交感神経鞘腫だけではなく,有効な神経鞘腫でも有効であった。剥離面を決定する腫瘍被膜の確認では,手術経験が少ない術者でも容易に確認でき神経脱落症状の減少に役立てられると考えられた。