日本観光学会誌
Online ISSN : 2436-7133
Print ISSN : 1341-8270
コンテンツツーリズムの地域社会への心理的・経済的効果 ─アニメ作品を舞台にした埼玉県秩父市を対象として─
堀越 聡太大江 靖雄
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2023 年 64 巻 p. 33-41

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抄録

コンテンツツーリズムにおいてアニメや映画の流行が永続するのは稀なケースであるため、ある一定期間が過ぎると聖地と呼ばれる地域も観光需要が減ってしまうことが課題となっている。一過性のあるこの観光形態について、流行が終わった後の心理的・経済的効果は十分解明されていない。作品ヒット後の観光需要が増えるポジティブな側面だけでなく、観光客を受け入れる立場の地域住民が感じるネガティブな側面も考慮する必要があると考える。そこで本研究では、首都圏の「聖地巡礼」定番スポットである埼玉県秩父市の市民及び事業者52名への現地調査結果をもとに、心理的・経済的効果の分析を計量的に行った。順序ロジット分析とロジット分析の結果から、観光需要増加に伴う市内インフラの整備や、注目度が高くなることによってより一層深くなる地域への愛着など、住民は一過性の経済効果のみならず長期的な付加価値をコンテンツツーリズムに感じていることが分かった。地域住民の心理的な効果は個々人の経済活動に対するモチベーションに寄与するため、地域住民への心理的な効果についても配慮しつつ観光振興を図ることが重要といえる。

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