本論文では、宿泊サービスと飲食サービスという補完的な製品の販売に関する価格政策に注目し、泊食分離を めぐる観光企業間の競争構造を理論的に考察する。代替的な宿泊サービスと飲食サービスを提供する2つの観光 企業が存在するもとで、宿泊と飲食に関する販売形態の選択、宿泊ならびに飲食の価格の選択を多段階ゲームに よって分析するとき、販売形態としてパッケージ価格政策が選ばれ、泊食分離の状況は均衡としては導出されないことを示す。この分析結果をもとに、これまでパッケージ価格政策が観光業界の基本構造となっている点について理論的な説明を提示するとともに、最近の観光業界において泊食分離や交泊分離を推し進める必要性が指摘されていることに対する政策的インプリケーションを示す。