1987 年 7 巻 2 号 p. 205-211
運動負荷中の心電図検査に広く普及しているMason-Likar (ML) 誘導の特徴を検討する目的で, 正常・異常105例につき, 仰臥位で標準12 (St) 誘導と比較した.
ML誘導はSt誘導に比し, IのR波は小さく, II, III, aVFのR波が有意に大きく, 平均電気軸はML誘導 (56.9°±38.4°) の方がSt誘導 (38.2°±40.4°) より垂直位であった.ML誘導の方がSt誘導よりも水平位となったのは105例中5例で, 異常左軸偏位例が多かった.
胸部誘導の波形はQRS群, T波共にML誘導とSt誘導は極めてよく一致し, St誘導の診断基準がそのままML誘導にも適用可能と考えられた.
aVL, III, aVFではML誘導とSt誘導の波形にかなりの差があり, St誘導の異常Q波がML誘導で消失あるいは浅くなる例を認めた.
運動負荷心電図にML誘導を用いる場合, aVL, III, aVFの波形変化やQ波の有無, および平均電気軸の評価には慎重な解釈を要する.