心電図
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6. β遮断薬の臨床―心不全, 不整脈―
松田 直樹梶本 克也古堅 あずさ嶋村 浩市志賀 剛渡辺 絵里平田 直美仁禮 隆笠貫 宏
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2004 年 24 巻 1 号 p. 32-39

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抄録

欧米における大規模臨床試験の結果は, β遮断薬が慢性心不全の生命予後改善のみならず, 突然死も有意に抑制することを明らかにした.しかし患者背景の異なる我が国における, β遮断薬の有効性は必ずしも明確ではない.そこで自験例を基に, 致死性不整脈患者あるいは慢性心不全患者に対するカルベジロールを中心としたβ遮断薬の予後に対する影響, 突然死予防効果, その機序について検討した. (1) 基礎心疾患を有する持続性VT/VF既往例358例 (68%が非虚血性心疾患) を対象とした後ろ向き検討では, β遮断薬内服例は非内服例に比し, 総死亡ばかりでなく突然死も有意に少なく, 特に左室駆出率35%以下の例で予後改善効果は大であった. (2) 慢性心不全327例 (78%が非虚血性心疾患) を対象としたカルベジロールの平均4.6年の前向き追跡の結果, カルベジロールの継続は, 自覚症状, 左室駆出率を有意に改善し, 総死亡, 突然死はいずれも中止群や非投与群に比し有意に低かった. (3) 加算平均心電図を用いた検討で, カルベジロールは慢性心不全患者の心室微小伝導遅延を改善した.以上より, 我が国においても, β遮断薬, 特にカルベジロールは, 致死性不整脈の有無にかかわらず心機能低下例の生命予後を改善し, 突然死を減少させると考えられた.また, 突然死抑制の機序として不整脈基質への直接作用も示唆された.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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