心電図
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糖尿病病態心におけるβアドレナリン作動性受容体を介する陽性変力作用減弱の機序
玉田 淳服部 裕一山田 陽一丸藤 哲佐久間 一郎北畠 顕菅野 盛夫
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1997 年 17 巻 4 号 p. 335-341

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抄録

糖尿病心におけるβ受容体を介する陽性変力作用の減弱の機序について解析した.実験には, 8週令雄性WistarラットにSTZを投与して糖尿病を作成した後4~6週経過したモデルを用いた.以下に, 対照群に比した糖尿病群の実験結果をあげる. (1) 左室乳頭筋標本において, β受容体刺激による陽性変力反応は顕著に減弱していた.また, 単離心室筋細胞のCa2+transientと収縮性の増加の程度も同様に減弱していた. (2) 心筋膜標品のβ受容体は, その数は約44%減少していたが, アゴニスト高親和性結合部位の比率には変化がなかった. (3) G蛋白の定量では, Gsには大きな変化はみられなかったが, Giは有意に減少していた. (4) Isoproterenol, forskolin, GppNHpおよびNaFによるアデニル酸シクラーゼ活性の増加は糖尿病心筋でも充分に保たれていた. (5) β受容体刺激による心室筋細胞のICa-L増強には, 対照群と有意な差を認めなかった. (6) β刺激による筋小胞体ホスホランバンリン酸化が障害されていた.
以上より, 糖尿病心でのβ受容体を介する陽性変力反応の減弱は, 主に筋小胞体機能異常によることが示唆された.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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