心電図
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下壁誘導におけるデルタ波の極性 (陰性) と頻拍中の逆行性P波の極性 (陽性) の不一致より複数副伝導路の存在が推定され, アブレーションによりその存在が証明された1例
土信田 伸夫鈴木 文男戸坂 俊雄浅見 光一芦川 英信縄田 浩子平尾 見三宮坂 信之川良 徳弘比江嶋 一昌磯兼 則子
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1996 年 16 巻 6 号 p. 769-781

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抄録

デルタ波の極性と頻拍中の逆行性P波の極性の不一致より複数副伝導路の存在が推定され, アブレーションによりその存在が証明された1例を報告する.症例は房室回帰性頻拍 (1種類) を合併した顕性WPW症候群の男性である.体表心電図ではII, III, aVF誘導にて陰性デルタ波を認め, 副伝導路 (AP) は (左室) 後壁側に存在すると推定された.頻拍中の逆行性P波はII, III, aVF誘導で陽性であった.同症例に対して電気生理学的検査およびカテーテルアブレーションを施行した.頻拍中の最早期興奮部位は左室前側であり, 同部位での2回の通電により頻拍は誘発不能となり, 逆伝導は房室結節経由となったが, 陰性デルタ波は不変であった.切断された左室前側壁のAP以外に, 後壁寄りに川頁伝導のみ可能な2本目のAPの存在することが推定された.最短房室伝導時間を示す左後中隔部位での1回の通電によりデルタ波は消失し, QRS波は正常化した.体表心電図における陰性デルタ波と頻拍時の陽性P波の所見は2本の副伝導路の可能性を示唆しているものと推察された.

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© 一般社団法人日本不整脈心電学会
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