2013 年 49 巻 5 号 p. 238-243
本研究では,20~68歳の健康な成人男性153名を対象として,綱牽引力の個人差を重回帰分析から検討した.被験者には,綱(φ30 mm,長さ2 m)を各自の引きやすい高さ(グリップ高)で水平に牽引させ,静的に発揮する最大牽引力(絶対値;RPSF)を測定した.RPSFを従属変数とした重回帰分析において,体重または除脂肪量はRPSFの変動の20%以上を説明する主要な変数であった.身体的特徴(年齢を含む)は,綱牽引力(絶対値)の変動に対して,概ね45~50%を説明することが明らかとなった.一方,体重やLBMで正規化した相対値を従属変数とする重回帰分析においては,年齢の関与が最も大きかった.相対値に認められた加齢の影響には,筋線維数の減少や日常生活における身体活動パターンの変化による筋力低下との関連があると推察された.なお,大きな綱牽引力を得るには,体重や除脂肪量が大きいことに加え,年齢が若いこと,グリップ高が低いこと,体脂肪率が小さく(除脂肪量の割合が大きく),脂肪量が多いことが有利であることが示された.