日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S07-2
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シンポジウム
高尿酸血症と心血管疾患の関係性 ~高尿酸血症の観察研究と介入研究を振り返る~
*明石 直之
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抄録

高尿酸血症の定義は、日本痛風・尿酸核酸学会の発行した『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版』において、血清尿酸値が7.0 mg/dLを超えるものとされている。このカットオフ値は、ヒトの血液中では尿酸結合蛋白の存在により尿酸が7.0 mg/dLまでは過飽和状態とならずに存在できることが由来となっているが、一方で臨床研究における高尿酸血症の定義は、元々血清尿酸値が女性の方が低いことを考慮して男女で異なった血清尿酸値のカットオフ値を設定したり、尿酸降下薬内服を高尿酸血症の定義に加えたりと、各研究によって様々である。しかし、高尿酸血症の定義に違いはあるものの、これまでの心不全、虚血性心疾患等の心血管疾患を対象とした観察研究では、高尿酸血症が予後規定因子となることが数多く報告されている。さらに、血清尿酸値が高い症例群においては将来的な心筋梗塞、心不全、心房細動を始めとする心血管疾患の新規発症率も高くなることが報告されている。このような観察研究の結果から、高尿酸血症は心血管疾患のリスクマーカーであることは明らかであるが、高尿酸血症に対する尿酸降下薬を用いた介入研究において、尿酸降下薬が心血管イベントを抑制するという一貫した結果は得られていない。最近では、2022年にLancet誌に報告されたALL-HEART試験が記憶に新しい。本研究では、痛風既往のない60歳以上の虚血性心疾患患者を対象に、アロプリノール使用の有無で臨床予後に差が出るか調査が行われた。合計5721人が登録され、中央値4.8年の追跡がなされた。結果は、アロプリノール内服群では通常ケア群と比較して血清尿酸値が大幅に低下したが、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心血管死の複合主要エンドポイントは両群で有意な差を認めなかった。しかし、本研究では痛風症例が含まれていなかったこと、治療前の血清尿酸値が0.34 mmol/L (5.7 mg/dL)と低い症例を対象としていたこと、また治療介入群では57%が内服中断していたことなどの問題があり、解釈に注意が必要である。高尿酸血症は、高血圧、糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病等の心血管疾患の危険因子を合併することが多く、高尿酸血症への介入試験を行う際に交絡因子の調整が非常に難しいことも結果の解釈を難しくする要因である。本発表では、これまでの高尿酸血症に関する観察研究と介入研究を振り返り、心血管合併症予防を見据えた高尿酸血症治療について考えてみたい。

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