日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_1-C-S05-2
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シンポジウム
抗不整脈薬のTDMによる薬物療法最適化
*島本 裕子
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抄録

抗不整脈薬は強力な薬理作用を有する反面、重篤な副作用もあり安全域が狭い。このため、抗不整脈薬の領域では薬物の体内動態とその抗不整脈効果に関する検討に基づき、薬物血中濃度モニタリング(TDM)が治療に応用されてきた。

抗不整脈薬のひとつであるアミオダロンは臨床薬理学的に非常に興味深い薬物体内動態を示す。脂溶性が高く脂肪組織に分布し、消失半減期は非常に長く(14ー107日)、代謝物であるデスエチルアミオダロンはアミオダロンと同等の薬理活性を有する。そのため、アミオダロンのTDMの際にはアミオダロンとともに活性代謝物デスエチルアミオダロンの血中濃度も併せて考慮する必要があり、両者の合算値によって評価が行われるが、その一方で両者の比率が体内におけるアミオダロン薬物動態の状況を知りうる有益な情報となりうることはあまり知られていない。

また腎排泄型薬物であるシベンゾリン、ピルシカイニドは添付文書に記載される標準投与量では高齢者や腎機能障害患者には過剰投与となる可能性が非常に高い。血中濃度が高濃度となり、中毒を発症する症例も散見されているが、添付文書上での明確な減量基準がないため、TDMによる用量調節が必須である。しかしながら抗菌薬や免疫抑制薬と比較し、抗不整脈薬のTDMの実施率は低いことが課題として挙げられる。

本シンポジウムでは臨床における実際の抗不整脈薬のTDMの実施例を紹介し、TDMを行うことによる抗不整脈薬薬物療法の適正化、とりわけ安全性の確保について議論したいと考えている。

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