日本インテリア学会 論文報告集
Online ISSN : 2435-5542
Print ISSN : 1882-4471
墨文字の墨色に関する研究
画像処理ソフトによる分析Ⅰ
和田 彩靑木 務
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キーワード: 墨色, 画像, 心理イメージ, 測色
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 18 巻 p. 35-40

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抄録

本研究の目的は,従来感覚的に捉えられてきた墨色をとり上げ,墨色の黒の微妙な色合いを数値化し,墨色の物理的性質を示すとともに,人間の視覚が墨色から受けるイメージである視覚的特性との関係を明確にすることである。 最初に,スキャナと画像編集ソフトを用いて墨色の色彩値 L*a*b* を求めた。この結果,墨の濃度は明度 L* と関係し,淡墨では地色の紙の色みが墨色に影響することがわかった。また,a*とb*の色調図から,固形墨と液体墨のインク特性が概ね示された。 次に,被験者による視覚またはイメージに基づく2組の形容詞対を用いた官能検査では,一般人は書家と同じように墨色の濃淡を判断できることがわかった。しかし,墨色の発色に関する「透明感」の項目では,一般人と書家では若干評価が異なった。このイメージの差異は,個人の経験や知識から得られる視覚による情報の確かさの違いと考える。最後に,心理物理量の関係から,「濃淡」は明度L*で指標化できた。また,視覚が受ける墨色の色のイメージは,概ね明度 L* と彩度 C* の関係で示すことができるが,墨色の発色に関する問題は,紙の素材や色,表面加工による影響など,さまざま要因が関係していると考えられ,今後さらに追及していく必要がある。

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© 2008 日本インテリア学会
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