日本インテリア学会 論文報告集
Online ISSN : 2435-5542
Print ISSN : 1882-4471
和歌山県下の明治初期から大正時代におさる医院建築の洋風化の足跡
千森 督子
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 18 巻 p. 11-18

詳細
抄録

本研究は,和歌山県下に残されている近代の洋風医院の事例を比較考察するなかで,医院建築の洋風化過程とデザイン的特性を捉えることを目的とする。 建物構成は,明治初期に建築された旧郭医院のみが,洋館の待合室兼調薬室と和館の診察室で構成される和洋併置式であるが,その後の医院は,洋室の診察室を核に洋館内に待合室,調薬室が配されている。すべての医院が入口で履物を脱ぐ様式゙で,平面構成は,明治中期から大正初期には並列型や環状型であったが,大正中期には,近代の平面構成である,玄関ホールや廊下をもつ型が登場し,各室の独立性が高められていく。 建築様式は,旧郭医院のみがベランダをもつコロニアルスタイルである。いずれの医院も開口部の建具を主体に洋風意匠が導入されているが,日本瓦葺き,漆喰壁,板張り床と和洋が混在した様式である。大正時代には,外壁が漆喰壁から下見板張りに変化し,外壁や軒先の意匠に洋風の繊細な装飾性が加味される。また,洋風意匠の中にも地域の伝統的民家にみられる,風雨除けの板囲いが軒先にデザイン化され,地域特性が認められる。

著者関連情報
© 2008 日本インテリア学会
前の記事 次の記事
feedback
Top