2017 年 100 巻 p. 83-104
山村が激しい過疎高齢化の波に襲われて久しい。山村に居住する高齢者たちの多くは、慣れ親しんだ近隣関係や自然環境のゆえに、長年住み慣れた地を離れない。こうした高齢者たちの生活は、他出子から種々の援助を受けて維持されてきた。さらに、他出子が高齢者に代わって集落の共同作業に出役することで、集落も維持されてきた。やがて集落に居住する高齢者たちが死亡や施設入所で欠けていくと、それも困難になる。事例とする集落では過疎高齢化が著しく、もはや居住者だけでは集落を維持することが困難である。しかし、中山間地域等直接支払制度の交付金を受け、この交付金を利用して他出子が自家の農地を維持し、集落の共同作業に参加するよううながす仕組みをつくる。また空き家となった実家家屋を維持管理するよう方向づける。このように外部の補助金、他出子の労力、さらには行政の支援といった、集落にとっての外部資源を積極的に導入することで、集落維持をはかっているのである。