現代の社会病理
Online ISSN : 2436-2174
Print ISSN : 1342-470X
論文
フリースクール運動台頭以前のオルタナティブ教育における私塾
−1970~80年代における遠山啓と八杉晴実の所論を通して−
香川 七海
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2021 年 36 巻 p. 103-118

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抄録

本稿は、1970~80年代を対象として、同時代に展開された数学者の遠山啓と私塾教師の八杉晴実の所論を検討することで、フリースクール運動台頭以前のオルタナティブ教育史における私塾の位置づけを明らかにするものである。

戦後日本における青少年の教育機会は、公教育と私教育に大別できる。私教育のうち、家庭教育を除外すれば、学校外の教育機関である学習塾が教育機会の大きな比重を占める。学習塾のなかで、補習塾は、1960年代に登場した。また、1970年代に、補習塾から分岐した私塾の一部では、学校教育とは異なる価値観が志向され、これらの私塾は、学校教育から離脱する青少年の受け皿となった。先行研究では、ほとんど言及されていないが、フリースクール運動台頭以前において、私塾の存在はオルタナティブ教育の萌芽として評価することができる。本稿では、遠山と八杉による所論を手がかりに、学習支援を中心とする私塾の役割をオルタナティブ教育史の側面から考察した。

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© 2021 日本社会病理学会
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