NIRAオピニオンペーパー
Online ISSN : 2436-2212
日本人にとっての自由と平等とはなにか
熟慮・熟議型調査から考える(3)
宇野 重規
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研究報告書・技術報告書 オープンアクセス

2022 年 62 巻 p. 1-4

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抄録

国民に支持される有効な政策を打ち出すには、「自由と平等」をめぐる国民の基本的な価値観を考慮することが不可欠である。NIRA総合研究開発機構では、経済・社会のテーマに関して、熟慮と熟議を取り入れた調査を実施した。その結果、平等よりも自由を選ぶ回答者の方が圧倒的に多いことが明らかになった。しかし、このことをもって直ちに「日本人は平等より、自由を重視している」と結論づけることには慎重である必要がある。第1に、新型コロナウイルスの対策のための個人の自由の制限については、むしろ肯定的な人が多数を占めている。おそらく日本人にとっての自由とは、個人の自由をラディカルに主張するリバタリアン的な自由というよりは、自由の規制をも許容する、むしろ秩序や社会的コンセンサスに親和的な自由が想定されている可能性が高い。第2に、自由を選ぶ人のみならず平等を選ぶ人の間でも、手厚い行政サービスより行政サービスの簡素化を支持する人が多い。特に、行政サービスの受益層がむしろサービスの削減を求めている。その要因が、行政サービスの公正さに対する不満や不信にあるのであれば、深刻な問題である。ここに日本の有権者の問題意識を読み取ることが可能であろう。

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