ビジネス実務論集
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論文
ロールモデルが大学生のキャリア探索に与える影響-家族や友人・知人と、著名人・架空の登場人物とを比較して-
湯口 恭子
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2024 年 42 巻 p. 41-51

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抄録

 本研究は、大学生がロールモデルとしてイメージする人物像を「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」に区分し、以下の2点を明らかにすることを目的とした。①「家族や友人・知人」「著名人・架空の登場人物」といった多様性のある広義のロールモデルが、大学生のキャリア探索に正の影響を与えるのかを明らかにする。②「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」というロールモデルのタイプによって、大学生のキャリア探索は異なるのかを明らかにする。

 調査会社を通して、大学1~4年生に調査(2021年10月5日~18日)を実施した。調査対象者392名の内、380名(男性189名、女性191名、平均年齢20.18歳)を分析対象とした。

 ロールモデルがいると回答した学生の方が、いないと回答した学生よりも全てのキャリア探索に正の影響が確認された。これにより、ロールモデルがキャリア探索を活発にしていることが明らかになった。キャリア探索の「自己理解」「情報収集」においては効果量も高く、明確な差が出ていると考えられる。狭義のロールモデル(湯口2022)ではなく、多様なロールモデルを設定した本研究においても、キャリア探索におけるロールモデルの有効性が明らかになったと言える。

 「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」の間に、キャリア探索の有意差はなかった。ロールモデルは日常、直接的に出会う身近な人物なのか、間接的に出会う著名人や架空の登場人物なのかというタイプの違いに関わらず、キャリア探索に正の影響を与えていたということになる。

 これまでのロールモデルは、日常、直接的に出会う身近な人物が対象であり、間接的なロールモデルの研究は少なかった。本研究は、著名人や架空の登場人物であっても、キャリア探索を促進させる可能性を示唆している。イメージするタイプの違いに関わらず、ロールモデルを持つことそのものがキャリア探索に意味を持つ可能性が示された。

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