2013 年 10 巻 4 号 p. 81-
数個から数万個程度の原子が凝集したクラスターは,高強度自由電子レーザーとの相互作用で孤立原子と大きく異なる振る舞いが見られる.本稿では我々のグループで行ってきた,SPring-8 Compact SASE Source 試験加速器でのクラスター実験から得られた主な知見を紹介する.バルクとほぼ同じ原子数密度で構成原子が凝集しているクラスターでは,多光子吸収が容易に起こることに加えて,生成した多数の電子・イオンが相互作用することでナノプラズマの生成をはじめとした興味深い状態が実現されていることが実験から示唆されている.ここでは主に,極紫外自由電子レーザー照射によってクラスターがイオン化する過程と,生成した電荷の振る舞いについて議論する.