2024 年 73 巻 1 号 p. 140-143
【はじめに】上腕骨解剖頚骨折を伴う肩関節脱臼骨折は単純X線検査のみでは診断困難な事が多く,徒手整復を行い転位が拡大する症例も存在する.今回同様の症例を経験したので報告する.【症例1】74歳,女性.転倒し左肩を受傷され前医を受診.解剖頚骨折に気づかず徒手整復され解剖頚骨折の転位が拡大し当院紹介.後日リバース型人工関節置換術を施行し,術後1年,問題なく日常生活を送っている.【症例2】94歳,女性.転倒し右肩を受傷.前医へ救急搬送され解剖頚骨折に気づかず徒手整復され解剖頚骨折の転位が拡大し当院紹介.緊急で観血的脱臼整復術を施行し,後日リバース型人工関節置換術を施行.術後10ヶ月,問題なく日常生活を送っている.【結語】整復時骨折のリスクを評価後,骨折(転位)の可能性を説明し,リスクが高い症例では精査を検討する必要があり,徒手整復を行う際は適切な徐痛,鎮静下で愛護的な徒手整復を行うことが重要と考える.