2023 年 72 巻 4 号 p. 817-820
【はじめに】非結核性抗酸菌感染による化膿性股関節炎の1例を経験したので報告する.【症例】53歳女性,皮膚筋炎,間質性肺炎に対してステロイド,免疫抑制薬を内服していた.歩行時の左股関節痛を認め,当科に紹介された.X線像で異常なく,MRIで関節液貯留を認めた.血液検査でCRP 2.7 mg/dLであったが股関節痛の発症前から高値であり関節穿刺は施行しなかった.初診9カ月後には関節裂隙狭小化を認め,人工股関節全置換術(以下,THA:total hip arthroplasty)を予定した.関節包を切開すると膿汁様の滲出液を認め,術式をデブリドマンに変更した.滲出液からM. intracellulareが検出された.抗結核薬を含む抗菌薬治療を開始したが,股関節の亜脱臼が進行し,10カ月後に骨頭抜去,ストレプトマイシン含有セメント留置を行った.術後3カ月で間質性肺炎,腎機能が悪化し,死亡した.【考察】免疫抑制患者で緩徐に進行する股関節症では,抗酸菌感染の可能性も念頭に精査を行う必要がある.