1978 年 31 巻 2 号 p. 149-154
紅こうじ菌が産生する色素の一種, モナスロルブリンが, 紅こうじ菌の一種Monascus anka UN 202-13菌に対して, どのような栄養生理的意義を有するかを検討する目的で実験を行なった。
結果として, リン酸1アンモニウム0.01mol/dl, 酸性リン酸カリウム0.1g/dl, 硫酸マグネシウム0.05g/dlおよび99.5%エタノール3ml/dlを加えた培地に, モナスコルブリンを微量添加してUN 202-13菌を培養すると, 生育および色素生産量が顕著に増加することを認めた。
0.005g/dlのモナスコルブリンを添加した場合, 無添加のおよそ3.5倍の生育を示し, 6倍の色素生産量の増加を認めた。これをグルコース10g/dlの場合と比較した場合, モナスコルブリン添加のほうが勝っていた。
0.04g/dlのモナスコルブリンを添加した場合は, 無添加に比して, 生育はおよそ6倍, 色素生産量は8倍増加し, グルコース10g/dl添加の培地との比較では, 生育ではおよそ2倍, 色素生産量では6倍増加することを認めた。
この現象は, UN 202-13菌がモナスコルブリンを単に排泄物として産生するのではなく, エタノールを有効利用するための賦活剤としての効果を有しているものと考えられ, モナスカス菌の生体内におけるなんらかの代謝に関与しているものと推察される。