栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
牛乳と人乳のたん白質栄養評価およびシスチン, 牛乳清たん白質の牛乳たん白質への補足効果について
西川 勲村田 信子割石 正信出家 栄記川西 悟生古市 栄一
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1975 年 28 巻 1 号 p. 9-16

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抄録

牛乳と人乳のたん白質の栄養上の差異を明らかにするために, 人常乳たん白質, 人初乳たん白質, 人初乳たん白質, 牛乳たん白質を, 8%たん白質レベルで, ラット (雄, Sprague Dawley系, 50~60g) に与え, 14日間飼育した。
PERは, 人常乳たん白質, 4.08; 人初乳たん白質, 3.37; 牛乳たん白質, 3.40であり, 人常乳たん白質は牛乳たん白質より有意に (p<0.01) 大であった。 人初乳たん白質は, 人常乳たん白質より有意に (p<0.01) 小であった。
人乳と牛乳のアミノ酸組成に等しいアミノ酸混合飼料についても同様の実験を行ない, PERは, 人常乳アミノ酸混合, 4.05; 牛乳アミノ酸混合, 3.05であり, たん白質飼料の場合とよく一致した結果が得られた。
血漿尿素量は, 人乳たん白質のほうが牛乳たん白質投与の場合より低い値を示した。
脱脂粉乳へのアミノ酸補足実験から, 人乳と牛乳のPERの差異は, アミノ酸の不足の順序や必須アミノ酸にはとくに関連がなく, 主としてシスチン含量の差に起因し, 牛乳たん白質にシスチンを補足することにより, PERは高くなり, また, 血漿尿素量は低下する。
カゼインと牛乳清たん白質の比率を変えて, さらに全シスチン含量が人乳と同一になるようにシスチンを添加した飼料間のPERには有意な差は認められない。 また, 人乳と牛乳のカゼインおよび乳清たん白質のアミノ酸組成には類似性がみられる。 したがって, 牛乳たん白質にシスチンまたは牛乳清たん自質を補足することは, PERを人乳たん白質レベルまで高めるために意義があるものと思われる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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