2021 年 50 巻 3 号 p. 197-200
50代男性.急性A型大動脈解離を発症し他院で緊急手術を受けた.エントリーが下行大動脈に存在する逆行性解離であったため,まずGelweave Lupiaeを用いた弓部大動脈全置換術が行われ,その2カ月後にTEVARによるエントリー閉鎖が行われた.早期に退院となったが,退院5日後に突然の心窩部痛を自覚した.再解離は認めなかったものの,胸骨右縁第2肋間で収縮期雑音を聴取し,Hb 6.7 g/dlと著明な溶血性貧血を認めた.心電図同期CTにて人工血管の高度屈曲を認め,さらにMRIで人工血管の屈曲が収縮期に顕著となることが観察された.人工血管高度屈曲による溶血性貧血と診断し,外科的治療を行った.人工血管は中枢側吻合部の近傍で大きく屈曲し襞を形成していた.人工血管本管の末梢部分はステントグラフト留置により完全に伸展した状態であった.人工血管屈曲部をいったん離断した後,再吻合した.溶血はすみやかに改善した.