日本心臓血管外科学会雑誌
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血小板由来マイクロパーティクルを用いたOPCAB術後の凝固亢進状態の評価
山内 英智伊藤 昌理渡邉 徹佐藤 浩之松居 喜郎
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2007 年 36 巻 3 号 p. 121-126

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抄録

脳梗塞を含む開心術後の血栓塞栓症はいまでも重大な合併症のひとつであるが,人工心肺を用いない冠動脈バイパス(OPCAB)術後の血小板活性化や凝固状態を明らかにした報告は少ない.血小板由来マイクロパーティクル(PMP)は血小板の活性化により形成される微小な膜小胞体で,その凝固促進作用からさまざまな病態での関与が指摘されている.既存の血小板機能や凝固線溶系の指標とともにPMPを測定しOPCAB術後が凝固亢進状態であるか検討した.対象は待機的OPCAB症例15例,全例男性で,術後はアスピリン100mgのみ使用した.術前危険因子,手術時間,輸血,術後入院日数,術前・術後3日目・7日目のCBC,PMP,βTG,PF4,血小板凝集能,FDP,D-dimer,TATにつき検討した.術前術後因子の有無でPMP値に差はなかった.術前,術後3日目,7日目のPMP(/104plt)はそれぞれ9.1±5.1,15.2±10.3,28.4±24.5(正常値<5.0)で3日目と7日目で術前より有意に上昇していた.βTGとPF4,血小板凝集能は術前後で有意差を認めず,PMPとの相関はなかった.FDP,D-dimer,TATは術後に上昇を示しPMPと有意な相関を認めた.PMP,TAT,FDP,D-dimerは7日目でも高値を示し血小板活性化とともに凝固線溶系の亢進が示された.術後の血小板活性化はアスピリンだけでは十分に抑制されていない可能性を示唆している.

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