日本心臓血管外科学会雑誌
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弓部大動脈瘤手術のための落差式選択的脳冷却灌流法
安達 秀雄尾本 良三横手 祐二木村 壮介許 俊鋭
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1993 年 22 巻 1 号 p. 7-13

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抄録

弓部大動脈瘤に対する手術時の補助手段として, 16℃の冷却酸素加血液で脳を選択的に灌流する落差方式の選択的脳冷却灌流法を考案し, 1988年7月より臨床応用を開始した. 1991年5月までに本法を用いて23例の弓部大動脈瘤手術を実施したので, これらを対象として本法の有用性について検討した. 動脈瘤破裂に対する緊急手術の2例と待機手術の1例の計3例 (13%) を失ったが, 他は生存し, 生存例では1例に脳梗塞を合併したが他の19例は中枢神経系に異常はなく日常生活に復帰した。本法は選択的に脳を冷却灌流するので必要に応じて循環停止を行うことができ, また全身を超低体温とする必要がないため体外循環時間を短縮できる利点がある. 本法は緊急手術時にも容易に対応でき, 従来の脳分離体外循環法と低体温下循環停止法の両者の利点を兼ね備えた弓部大動脈瘤手術時の有用な補助手段と考えられた.

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